読了: Evangelidis (2024) ステルス値上げは不公正だと感じられる、なぜなら欺瞞的だから

Evangelidis, I. (2024) Shrinkflation Aversion: When and Why Product Size Decreases are Seen as More Unfair Than Equivalent Price Increases. Marketing Science, 43(2), 280-288.

 昨年のMarketing Scienceに載った論文。面白そうだし、ちょっと都合もあったので読んでみた次第。PDFが手に入らず、仕方なく著者が公開しているdraftで読んだ。
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読了: Park, Gelman, & Gafumi (2004) Mr.Pによる選挙予測

Park, D., Gelman, A., Gafumi, J. (2004) Bayesian Multilevel Estimation with Poststrafication: State-Level Estimates from National Polls. Political Analysis, 12, 375-385.

 みんな大好きミスターPことMRP (マルチレベル回帰・層別)の初期論文。googles様的には被引用回数589件。なお、一般にMr.Pの提案論文と称されているGelman & Little (1997)は411件である。
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読了: Morris, Wheeler-Martin, Simpson, Mooney, Gelman, & DiMaggio (2019) 階層空間モデルのひとつBesag-York-MollieモデルをStanで推定する方法

Morris, M., Wheeler-Martin, K., Simpson, D., Mooney, S.J., Gelman, A., DiMaggil, C. (2019) Bayesian hierarchical spatial models: Implementing the Besag York Mollié model in stan. Spatial and Spati-temporal Epidemiology. 31.

最近の調査データ分析でよく使われるみんな大好きミスターPことMRPについて調べていると、空間構造を入れるという話があって、そりゃまああるだろうとは思うのだが、そこに出てくるBYM2モデルというのになじみがなくて面食らった。調べてみたら、Gelmanさんたちが「StanでBYM2モデルをどう書くか」というチュートリアル論文を出しておられたので、パラパラめくってみた。
 本題は3節のStanコードの紹介なのだが、単にBYM2モデルってどんなんなのかを知りたいだけないので、申し訳ないけど3節以降はパス。
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読了: Sutton, Almquest, & Wakefield (2025) COVIDワクチンの小地域接種率をMRPと空間MRPで推定してみたけどからっきしダメでした

Sutton, A., Almquist, Z., Wakefield, J. (2025) Evaluating Multilevel Regression and Poststratification with Spatial Priors with a Big Data Behavioural Survey. arXiv:2503.05915.

先月arXivにあがったプレプリント。普通のMRPと空間MRPを実データで比べるという、関心にジャストフィットな話だったので、試しに読んでみた。JRSS Series Aに投稿中だと書いてあるが、ほんとだろうか。単にlatexのテンプレートがそうなっているだけなのかも。
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読了: Gelman & Little (1997) 階層ロジスティック回帰を使った事後層別推定 (のちにいうMr.P)

Gelman, A., Little, T.C. (1997) Poststratification Into Many Categories Using Hierarchical Logistic Regression, Survey Methodology, 23(2), 127-135.

 00年代の選挙予測でブイブイいわせ、いまでは調査データ分析の標準的ツールにまで成り上がってしまった、ご存じミスターP(MRP, マルチレベル回帰・層化)の元論文としてよく引用されるもの。掲載誌はカナダ統計局の地味ーな雑誌である。
 MRPの解説はいまや巷に溢れているから、別にいまこれを読むことはないんだろうけど、調べ物のついでに読んだ次第である。温故知新!
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読了: Little (1993) 調査データ解析における事後層別について、予測モデリングの観点から解説しよう

Little, R.J.A. (1993) Post-Stratification: A Modeler’s Perspective. Journal of the American Statistical Association, 88(423), 1001-1012.

 統計学者Little先生による、調査における事後層別(post-stratification)についての解説。伝統的なデザイン・ベースの説明ではなく、モデル・ベースの観点から説明するというのがミソである。
 良く引用される論文で、前から気になっていたのだがずるずると後回しになっていた。このたびちょっと調べ物をしていて、その流れで思い出し、試しに読んでみた。別にいま読まなくてもいいっちゃいいんだけど、この一週間体調を崩して寝込んでいたので、そのリハビリを兼ねている。
 途中で気が付いたけど、これ、招待講演を元にした論文なんですね。講義を思わせるちょっとカジュアルな書きぶりである。
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読了:Gao et al.(2021) MRP(マルチレベル回帰・層化)に構造化事前分布をいれる

Gao, Y., Kennedy, L., Simpson, D., Gelman, A. (2021) Improving multilevel regression and poststratification with structured priors. Bayesian Analysis, 16(3), 719-744.

 2020年にプレプリントを読んでメモをとっていた奴。このたび事情により公刊版を読み直したので記録しておく。
 なお、ついでにメモも取りなおした。自分の古いブログ記事を修正するのって、なんだか妙なものだ。物好きにもほどがあるという気がする。

読了: Basu, Kumar, & Kumar (2023) 消費者脆弱性についての論文の定量分析

Basu, R., Kumar, A., Kumar, S. (2023) Twenty-five years of consumer vulnerability research: Critical insights and future direction. The Journal of Consumer Affairs. 57, 673-695.

 調べ物のついでにパラパラめくったやつ。消費者脆弱性の文献の定量分析である。
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読了: Hill & Sharma (2020) 消費者行動論からみた消費者脆弱性

Hill, R.P. & Sharma, E. (2020) Consumer Vulnerability. Journal of Consumer Psychology, 30(3), 551-570.

 先日、仕事の都合でメモを取りながら読んだ奴。
 消費者行動論研究の文脈での消費者脆弱性についてのレビュー。「消費者脆弱性」で検索すると消費者保護の法整備の話ばかりヒットするので、こういうレビューは助かる。
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読了: Broniecki, Leeman, & Wuest (2022) MrPで地域レベル変数が多すぎるとき、機械学習でいい感じにやる方法

Broniecki, P., Leemann, L., & Wuest, R. (2022) Improved Multilevel Regression with Post-Strati cation Through Machine Learning (autoMrP). The Journal of Politics, 84(1), 597–601.

 先日仕事の都合で読んだ奴。みんな大好きMr.Pことマルチレベル回帰・事後層別を機械学習で改善しますという話。RパッケージautoMrPの元論文である。
 これ、以前から読もうと思っていたのだけど、勤務先の同僚が読んでくれていたので放置していたのである。トシを取ると多様な言い訳を思いつくようになることがわかる。
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読了: 矢野目(1997) 上海映画人・張善琨、その波乱の人生

 仕事とはぜんっぜん関係ないけど、読んだものはなんでもメモしておこう、というわけで…

 youtubeなどをぼんやり眺めていて(現実逃避)、昔のカンフー映画「拜錯師父叩錯頭」(“Eagle’s Killer”, 1979)の製作会社が「新華影業公司」となっていることに気づき、へーそんな会社があったのか、だれが経営したんだろうか、とふと気になった(現実逃避)。
 HKMDB(有志による香港映画データベース)をみると、「新華影業公司」として1934年から1975年まで出品作があり、1957年に「香港新華影業公司」に改名との注記があり、「香港新華影業公司」としては1952年から1983年まで出品作がある。えええ? 香港で戦前から戦後まで継続した会社だったの? そんな映画会社がありえたの? とさらに気になった(現実逃避)。

矢野目直子 (1997) 日中戦争下の上海に生きた映画人-張善琨 (上). 中国研究月報, 589, 1-9.
矢野目直子 (1997) 日中戦争下の上海に生きた映画人-張善琨 (下). 中国研究月報, 591, 14-32.
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読了: 坂地ほか (2024) 人工知能学会誌「ナラティブと人工知能」特集号

武富有香・須田永遠 (2024) 物語の読解技術とその応用 -文学研究におけるナラティブ-. 人工知能, 39(5), 588-594.
土井智暉・谷中瞳 (2024) 自然言語処理を用いたナラティブ分析の可能性. 人工知能, 39(5), 608-614.
坂地泰紀・塩野剛志・金田規靖・新谷元嗣 (2024) 経済におけるナラティブ. 人工知能, 39(5), 651-657.

昨年9月の人工知能学会誌「ナラティブと人工知能」特集号より。仕事の都合で読んだ。ほんとは所載の13本を全部読んだんだけど、全部書くのは手間なので、特に面白かった3本をメモしておく。

読了: Escalas (2007) 自己に結びつける広告メッセージであっても、それが物語的に処理される場合と分析的に処理される場合では効果が違う

Escalas, J.E. (2007) Self-referencing and persuasion: Narrative tranportation versus analytical elaboration. Journal of Consumer Research, 33(4), 421-429.

 ちょっと経緯があってざっと目を通したやつ。著者のEscalasさんは新製品のメンタル・シミュレーションについて調べていた時になんどか見かけた名前である。
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読了:「香港電影城」「キーウで見たロシア・ウクライナ戦争」「反逆罪」「香港デモ戦記」

90年代後半、小学館が香港映画のガイド本のシリーズを出していたことがあった。これはその1冊目。中央線沿線の駅の近くの古本屋で見つけてつい買ってしまった。奥付には編集:新企画社とある(小学館傘下の編プロで、後に小学館スクウェアに吸収された模様)。
 国立国会図書館のデータベースによれば以下が出版されたらしい。売れたんでしょうね。

  • 冬門稔弐ほか「香港電影城 : 香港映画スーパーガイド」(1995)
  • 冬門稔弐ほか「香港電影城 : 香港映画スーパーガイド 2」(1996)
  • 冬門稔弐ほか「香港電影城 : 香港映画スーパーガイド. 3 (香港銀幕特急)」(1996)
  • 冬門稔弐ほか「香港電影城 : 香港映画スーパーガイド. 4 (香港映画時代) (Popcom business)」(1997)
  • 香港電影城編集部編「香港街歩き大丈夫ガイド」(1997)
  • 冬門稔弐ほか「香港映画ルネッサンス : 香港映画スーパーガイド(香港電影城 ; 5)」(1998)
  • 香港電影城編集部編「香港スター伝説 : 新・香港電影城 (エスノブックス)」(1999)

小学館は同時期に谷垣健治「燃えよ!!スタントマン : 香港電影」(1997)も出版している。かのアクション監督・谷垣健治さんの最初の著書だと思う。それらしい古本屋に行くたびに探している本である。
 1995年と言えば、香港返還は目の前に迫り、ジョン・ウーはハリウッドで「ハード・ターゲット」を撮ったが、ジョニー・トーはあまたの職人監督のひとりに過ぎず、レスリー・チャンは全然元気、という時期である。パラパラめくっただけだけど、なんだかしんみりしちゃいました。
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